2025.08.25
横浜まち情報
香り高い十割蕎麦と「幻のわさび」が味わえる手打ちそば店「響心庵」

東京ガス横浜中央エネルギー(ヨコエネ)は、横浜市内の8つの行政区(西区・神奈川区・港北区・都筑区・青葉区・旭区・瀬谷区・鶴見区)にて、東京ガスのサービス窓口を担当しております。そこで、日々地域のお客さま先で働く私たちだからこそ知っている、地元のお店情報をご紹介します。
本来の味と香りが楽しめる「十割蕎麦」
東急田園都市線青葉台駅から徒歩10分。住宅街の一角に佇む「響心庵(きょうしんあん)」さんは、今年で10年目を迎える手打ちそば店です。店名には、店主・吉成篤志さんの「おいしいだけでなく、心地よい時間を提供して、"きてよかった"と心に響くそば屋にしたい」という想いが込められています。

店内に入ると、カウンターに置かれた石臼が真っ先に目に入りました。これはお客さまが自由にそばの実を挽く体験ができるもので、試しに力を込めて持ち手を掴んだものの、石臼が重すぎてびくともしませんでした。

「もしや、これでそばの実を挽いているんですか……?」と伺うと、「まさか、実際に提供しているものは、電動の機械で挽いたものですよ」とやわらかな声が返ってきました。
「響心庵」さんでは、最もおいしいとされる「挽きたて・打ちたて・茹でたて」の「三たて」で、そばを提供しています。国産の上質なそばの実を毎日製粉し、その日の分だけそばを打ち、注文が入ってから茹でているとのこと。
主に作っているのは、高級品とされる「十割蕎麦(じゅうわりそば)」です。一般的によく食べられている「二八蕎麦(にはちそば)」は、小麦粉2割・そば粉8割で作られたものですが、「十割蕎麦」は小麦粉を一切使わず、100%そば粉のみ。清涼感あるそばの香りが楽しめるよう、低速で製粉し、水のみでそばを打つのがポイントです。
そばの香りを引き立てる、幻の薬味
取材当日は、人気の平日限定ランチメニュー、「野菜天ランチ」をいただきました。「すべてが手作りのため、仕込みが大変すぎて土日祝日は用意できないから」と、「手打ちそば屋が本気で作ったランチ」と銘打たれています。

早速そばをいただくと、モチモチとした食感とコシの強さに仰天。その秘密はそばの打ち方にあり、「水を加えすぎると歯ごたえがなくなり、逆に足りないとコツコツと硬いそばになってしまう」とのこと。「良いあんばいを狙っている」と言いますが、一般的なお店ではまとまりやすいお湯で十割蕎麦を打つところが多く、水のみで作るには高い技術が必要なのだそうです。

薬味に添えられたわさびは、「幻のわさび」と呼ばれる最高級品種「真妻(まづま)わさび」。直前にすりおろされたものを箸(はし)ですくい取り、そのまま食べてみると、清々しい香りのあとにほんのりと辛味が感じられます。市販のツンとするわさびとはまったく異なり、「つゆに溶かすのはもったいない!」と感じてしまうほど。「このままお酒のあてになりそうだな」と考えていたら、本当にそうした楽しみ方をされているお客さまもいるそうです。
同じ薬味皿に盛られているネギは、ネギ専門市場から仕入れている「千寿葱(せんじゅねぎ)」。こちらはシャキシャキとした歯触りと爽やかな風味が特徴です。薬味というと、単なる脇役としか捉えていませんでしたが、どちらも「単体でおかわりしたい!」と思うほど、素材の違いが感じられました。
「昔からわさびとネギは味覚のリセットや、殺菌効果があるものとして知られていますが、実はそばやつゆの味を高める効果はないんです。むしろ、そばの香りを邪魔してしまうこともある。
なので、そば本来の味を楽しみたい場合は、ある程度そばを堪能してから、箸休めにわさびを一口食べる。そうすると、そばの香りをまたしっかりと感じられるようになりますよ。また、ネギはそばを半分ほど食べたあと、つゆに入れるのがおすすめです。」
ほかにも、揚げたての天ぷらやほうれん草の白和(しらあえ)、サラダ・くず餅の小鉢までついて、とても満足度の高いランチでした。

メニューには温かいそばもありますが、比較的のびにくい「二八蕎麦」で提供されます。「十割蕎麦」を味わいたい方は、ぜひ冷たいそばを選んでください。
20年の修行で生まれた職人魂
薬味ひとつ取っても、食材への並々ならぬこだわりが見える吉成さん。ですが、そば職人を志すきっかけとなったのは、意外にも職業安定所でした。もともと刀鍛冶(かたなかじ)や和服作りなど、日本の伝統的な職業に就きたいと思っていたところ、タイミングよく「そば職人見習い募集」の求人が目に止まったのです。

応募先である個人経営のそば店で働き始めると、想像を超える厳しい修行が待っていました。最初の3年間は雑用のみ。食器洗いや出前に掃除。職人らしい仕事といえば、ネギや丼物に使われる野菜を切ることくらいでした。
「30分以内に終わらせないと『出前の回収に行ってこい』と外に出されてしまうので、必死になって切り続けました(笑)」
そば打ちの練習ができるようになったのは、5年目のこと。天ぷらの練習をさせてもらえるようになったのは、7年目の頃だったそうです。職人の世界ならではの目で見て盗む修行に、「何度も辞めたくなった」と当時を振り返ります。でも、「教えてもらえないからこそ、自分の頭で考える力がつきました」と懐かしそうに教えてくれました。
その後、高級店や懐石料理店などで計20年間の修行を重ね、そば以外の料理も担当するように。そして2015年、40歳で「響心庵」のオープンに至りました。

開店当初から、「自分の子どもにも安心して食べさせられるような、安全でおいしいものを提供したい」と無農薬の素材を選んでいましたが、その取り組みは年々進化。小麦粉は安全性の高い国産に切り替え、健康を考えて砂糖は上白糖(じょうはくとう)から素精糖(そせいとう)に、揚げ油は一番搾りの米油に変えました。自ずと原材料費が年々上がっていますが、「それでも妥協したくない」と言い切ります。
「今まで食べたそばの中で、一番おいしい」「こんなにおいしい十割蕎麦があったのか」というお客さまの声が、日々の励みになっているそうです。

季節の移ろいをそばで味わう
今の時期にぜひ味わいたいのは、夏季限定の「へべすそば」です。

「へべす」とは、宮崎県日向市特産の希少な柑橘で、スダチやカボスの仲間。酸味がほどよいため、輪切りをそのまま食べることもできます。常連客のなかにはこのメニューを待ち望んでいる方も多く、シーズン前になると「へべす、まだ始まらないの?」と電話が来るそう。さらに、秋には旬のきのこを使った天ぷらそばも登場します。
20年の修行で培った職人技を体感できる、「響心庵」さんの十割蕎麦。うだるような暑さで食欲が落ちてしまうこの時期に、ぜひ本物の味を体験してみてはいかがでしょうか?
注)当記事でご紹介した商品の価格・サービスは、2025年7月時点のものです。「響心庵」さんにインタビューを行い、いただいたコメントを編集して掲載しています。
【店舗情報】

住所
横浜市青葉区桜台2-2 オキガザール1階
営業時間
昼の部 11:30~15:00(L.O.14:30)
夜の部 17:30~22:00(L.O.20:45)
定休日
水・木曜日(祝日の場合は営業)
※ 臨時休業する場合は、Googleの店舗情報やFacebook・ホームページでお知らせしています。
電話番号
045-982-6682
※ 席の予約可能。人数によっては座敷・店内貸切も可。土日祝は混雑状況により、来店順の場合あり。
取材・文・撮影/弓橋 紗耶
作成:2025年7月